内定と労働契約の成立

2011年12月27日 掲載

 大学卒業予定者に対して出される採用内定の法的性質について、判例は始期付解約権留保付労働契約と解しています(大日本印刷事件。昭和54年7月20日)。つまり、大学卒業後を始期とし、卒業単位の不足や健康不良、素行不良など誓約書記載の解約条件を留保した形での労働契約というわけです。

 したがって、企業が内定を出し、学生がそれを受諾した時点で労働契約の成立となります。ただ、上記のとおり、解約権を留保した労働契約ですので、内定を出したら必ず入社させなければならないというわけではありません。客観的に合理的で、社会通念上、相当と是認される事由があれば、採用内定を取り消すことは可能です。
 具体的には、卒業単位が不足して卒業できない場合や、傷病により当初契約した内容の労務提供が困難になった場合、反社会的な行為があった場合、学生から提出された書類に重大な過誤または虚偽の記載があった場合、企業が経営難に陥った場合などです。

 内定取り消しが無効とされる場合には、労働契約が成立しているため、解雇予告の規定に従い、30日分の解雇予告手当を支払わなければなりません(労働基準法20条)。また、内定を取り消さないまでも、入職時期を繰り下げる場合には、本来の入職日から繰下げ日までの間の休業補償(同法26条)の支払いが必要になると考えられます。

 他方、学生側からの内定辞退についても、労働契約が成立している以上、一方的な解約は損害賠償請求の対象となりますが、実際に損害賠償請求されるケースはごくまれと考えられます。


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