一時休業

2011年12月27日 掲載

 事業所の損壊など休業に「やむを得ない事情」があるときは、労働者が契約通りに労務を提供できない状態に陥っても使用者に責任がないため、労働者は賃金を請求することができません(民法536条)。使用者にも賃金を支払う義務はないのが原則です。

 この「やむを得ない事情」の有無については、休業の必要性、労働者の受ける不利益の内容・程度等を考慮して判断します(横浜地裁平成12年12月14日判決)。

 「やむを得ない事情」なしと判断された場合は、その休業は使用者の責任ですから、使用者は従業員に対して平均賃金の60%以上の手当を支払う必要があります(労働基準法26条)。

 現在休業している被災企業のほとんどは「やむを得ない事情」ありでしょうから、従業員の中には「アルバイトをして生活費を捻出したい」という方もおられるはず。
 就業規則に兼職禁止条項がある企業も多いですが、これが認められるのは、平時であっても、休養不足等によって労務提供に支障をきたす場合や、社内秩序維持に影響がある場合に限られています。
 そのため、労務提供や社内秩序への影響が少ない一時休業中は、比較的アルバイトも許されやすいと思われます。

 ただ、同業他社での勤務ということになると、企業にとって秘密漏洩の危険が高まるので注意が必要です。

 過去に兼職禁止違反とされた例としては、取締役副社長が同業他社を設立し、取締役に就任した事案があります。経営上の秘密が漏れるなど社内秩序を乱すおそれがあるとして、解任が認められました(名古屋地裁昭和47年4月28日判決)。
 また、肉体的疲労の軽減を目的とした残業廃止のさなかに、再三の警告にも応じず同業他社で就業した事案でも、労務提供への支障のおそれがあるため兼職禁止違反と認められました(福岡地裁昭和47年10月20日判決)。

 これに対し、常勤でなければ兼職禁止違反とされなかった例もあります。
 印刷会社の従業員が病気欠勤中に同業他社に遊びに行き、頼まれるままに写植の仕事を行った事案については、本人が所属会社で機密事項を扱う立場になかったことや、常勤ではなく仕事を手伝った程度であることを理由に許されると判断されました(東京地裁昭和59年2月28日判決)。

 兼職禁止違反か否かは本人の立場や仕事内容にもよりますから、元々の所属会社と同業他社の仕事内容等を確認したうえで、あらかじめ所属会社の許可を得る必要があります。


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