株主総会議事録の体裁 2 ~記名押印(1) 記名押印は必要か?~

2013年9月5日 掲載

 取締役会や監査役、委員会では、議事録に異議を唱えなければその内容を承諾したものと推定されるため、議事録に記名押印すれば自然と「議事録の内容を保証する」という意味合いが生じます(会社法369条5項393条4項412条5項)。

 これに対し、株主総会の議事録では記名押印に対してどういう考えを採っているのでしょうか?

○法令上、記載が求められているのは?

 株主総会議事録への記載が求められているのは、「作成者の氏名」のみです。
 株主総会は単なる記録・証拠とされていますので、わざわざ出席役員に記名押印させて内容の真正を担保することもありませんし、記名した者が法的責任を負うような規定もありません。

 ただ、取締役会非設置会社では、代表取締役を定めるときの主な手段として株主総会の決議が用いられていますので(会社法349条1~3項)、その時の総会議事録には、議長や出席した取締役全員の記名押印が求められます。
 このとき、本人確認のために、市区町村長作成の印鑑証明が必要です。
 (今回用いた印鑑が、以前、前代表取締役が登記所に提出した印鑑と同じものである場合は印鑑証明不要。商業登記規則61条4項柱書ただし書)。

○氏名だけでなく肩書も記載すべき?

 署名または記名押印のとき、取締役の詳しい肩書(取締役社長、取締役副社長、専務取締役、常務取締役など)も記載しておく方がよいでしょう。

 確かに、「代表取締役」のみとしたり、全員「取締役」との記載にとどめる事例も存在します。
 しかし、会社役員の地位および担当は事業報告の記載事項とされています(会社法施行規則121条2号)。
 また、取締役会設置会社については、取締役の中でも上記括弧書きのような役付取締役を、特に「業務執行取締役(対外関係を伴わない内部的な業務執行を担当する取締役)」として選定する規定があり(会社法363条1項2号)、役付取締役をその他の取締役と区別する意図が感じられます。
 こうした事情を汲み取って肩書も記載しておけば、作成者の立場がより明確になり、議事録の信頼性も向上するはずです。

 次回は、議事録に名前を連ねるべき取締役とはどんな人か、実務ではどう処理されているかについて説明します。


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