閲覧・謄写請求 3 ~閲覧・謄写請求への対応~

2013年10月29日 掲載

 これまでは閲覧・謄写の請求段階の話ばかりでしたが、今回は実際に株主から閲覧謄写請求があった場合の会社の対応につき、説明します。

1.閲覧謄写請求書を準備する

 請求書の様式に関して特に決まりはないので、請求書を請求者側で用意しても会社側で用意しても構いません。
 一般的には、会社が閲覧謄写請求書の様式を指定します。

2.請求者に閲覧謄写請求の資格があることを確認する

 株主総会議事録の閲覧謄写請求が認められているのは、株主と債権者、親会社の社員です(会社法318条)。したがって、請求者に請求の資格があるかどうかを確認する必要があります。ここでは、株主の場合を中心に話を進めていきましょう。

 未上場企業の場合は、売買の頻度も少なく、株主の動向の把握も比較的容易ですから、請求があった時点で請求者が株主かどうかを確認すれば済みますが、上場企業の場合は刻々と変動しますから、把握が難しくなります。そこで用意されたのが「個別株主通知」という制度です。

 上場企業の株主が閲覧謄写請求をするときは、株主が口座を開設している証券会社等に「個別株主通知」を申し出る必要があります。
 申出を受けた証券会社等は、これを証券保管振替機関(ほふり)に取り次ぎます。
 そして、このほふりから会社に対して、申出を行った株主の保有株式等の情報を通知するのです(個別株主通知振替法154条2項)。
 (ちなみに、閲覧謄写請求者が会社債権者であるときは、債権内容が申告されます。)

 その際、ほふりから証券会社側に個別株主通知の通知日が連絡されるので、証券会社等は申出を行った株主に個別株主通知を行った旨とその通知日等を知らせます。
 株主が会社に対して権利行使をできるのは、この通知日から4週間以内です(振替法施行令40条)。

 したがって、会社側は、株主からの閲覧謄写請求書を受理するにあたり、この閲覧謄写請求が通知日から4週間以内になされたものかを確認する必要があります。

3.請求者が株主または会社債権者本人であるかどうかを確認する

 閲覧謄写請求書が受理されたら、次は請求者の本人確認です。

 まず、株主については、未上場企業の場合は、請求書の氏名・印鑑と、株主名簿の氏名・印鑑と照合して本人確認を行います。
 上場企業の場合は、株券電子化により印鑑票が廃止され、従来のように届出印で株主の本人確認をすることができなくなりました。そこで、現在では、閲覧謄写請求書への実印の押印と印鑑証明書の添付、運転免許証の提示といった方法を用いて請求者の本人確認を行っています。

 請求者が債権者である場合は当該債権の存在を関係部署で確認したうえで、実印の押印と印鑑証明書の添付、運転免許証の提示といった方法を用いて本人確認を行うことになります。

 なお、代理人が閲覧謄写請求をする場合は、株主・会社債権者本人からの委任状が必要です。この際、委任状に実印の押印と印鑑証明書の添付を求めて委任状の真正性を確かめたり、代理人の本人確認をしたりといった手間も生じることになります。

4.請求者の目的が正当なものか確認する

 閲覧謄写請求書の記載や請求者からの聴取等を通じて、請求が正当な目的であるかどうかを確認せねばなりません。
 もしも正当な目的でないこと(たとえば、営業妨害や嫌がらせなど)を理由に閲覧謄写を拒否するのであれば、会社がそれを立証する必要があります。慎重に検討しましょう。

5.営業時間内に、会社の担当者の立会いの下、閲覧謄写を認める

 不正な目的による閲覧謄写を防ぎ、適切に閲覧謄写が行われるよう、会社の担当者は閲覧謄写の場に立ち会って監視するのが一般的です。
 前回も触れましたが、謄写に際して実費相当額を徴収することも可能です。


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