決議事項の上程及び審議(3) ~取締役及び監査役選任の件1~

2014年3月12日 掲載

 取締役及び監査役は株主総会決議によって選任される必要があります(会社法329条1項)。委員会設置会社以外の会社では、取締役の任期は2年(会社法320条1項)、監査役の任期は4年(会社法336条1項)であり、委員会設置会社では取締役の任期は1年(会社法402条7項)です。したがって、委員会設置会社では毎年の定時株主総会において、委員会設置会社以外の会社では、少なくとも2年に1回は定時株主総会において取締役あるいは監査役の選任をする必要があります。
 そこで、取締役及び監査役を選任するときは、取締役及び監査役選任の議案を上程・審議・決議を経なければならず、それを株主総会議事録に記載する必要があります。

○選任方法

 取締役や監査役の選任方法としては、各取締役及び監査役を個別に選任していくことが論理的には正しいようにも思えます。しかし、株主総会の効率的運営や株主の手間の省略という観点から、一括して選任する方法が近時では定着しています。一括選任については裁判例においても有効とされています(名古屋高判平成12年1月19日)。

 ただし、取締役及び監査役の選任を議長の指名に一任する決議をすることについては注意が必要です。このような決議はあくまで株主総会が議長に取締役及び監査役の選任権限を付与するだけです。議長の指名だけで終わった場合には、取締役及び監査役の選任の決議が行われていないとして、株主総会決議取消原因(会社法831条)となるおそれがあります。したがって、仮に議長に指名を一任するのではなく、一任決議は取締役及び監査役の候補者の選定を議長に委ねる決議とし、その後、議長が提示した候補者に従い株主総会の選任決議をした方がよいと思われます。

○就任承諾の方法

 株式会社と役員及び会計監査人との法律関係は、委任の関係にあります(会社法330条)。したがって、株主総会の選任決議だけでは法律的効力は生ぜず、選任された役員及び会計監査人の就任の承諾が必要です(民法643条)。取締役・監査役・代表取締役・特別取締役又は会計参与・会計監査人の就任による変更の登記の申請の際には、申請書に就任承諾書を添付しなければなりません(商業登記法54条1項、2項1号)。

 実務においては、株主総会議事録に取締役及び監査役が就任の承諾をした旨の記載がある場合にはその議事録をもって就任を承諾したことを証する書面とすることができる、という取り扱いをしています。
 株主総会議事録において、就任を承諾した旨を記載する場合には、選任された取締役及び監査役が株主総会の場で就任承諾の意思表示を何らかの方法でする必要があります。具体的には、取締役及び監査役が選任後の就任の挨拶をした場合には、就任の承諾をする旨の直接の言及がなくとも、挨拶により就任の承諾の意思表示があったと取り扱うことは問題ないと思われます。
 株主総会の場に取締役及び監査役が出席していない場合には、株主総会議事録に就任の意思表示を記載することができませんので、別途、就任承諾書をとることとなります。

 次回は株主総会議事録への記載についての具体例の説明をしたいと思います。


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