決議事項の上程及び審議(6) ~退任取締役及び退任監査役に対する退職慰労金贈呈の件~

2014年4月2日 掲載

 今回は、決議事項の上程及び審議の具体的内容として、退任取締役及び退任監査役に対する退職慰労金贈呈の件についての説明をしたいと思います。

○退職慰労金を支給する際の株主総会決議の必要性

 退職慰労金は、取締役及び監査役の在職中における職務執行の対価として支給されるものである限り、会社法361条1項の「報酬」に含まれると判例で解されています。また、退職慰労金の金額などの決定を全て無条件に一任するのではなく、支給基準を明示しそれによって取締役会が決議することは許されます。ただし、会社法361条で報酬等の決定について株主総会決議を必要としたのはお手盛防止を趣旨とするものです。したがって、お手盛防止のために、退職慰労金の総額を定めて株主総会の決議を得ることが必要です。
 また、裁判例によると、株主の質問があると、金額についての説明をしなければならないとしたものがあります。したがって、株主からの質問があった場合には説明をした方が良いと思われます。

○具体例

第○号議案 退任取締役及び退任監査役に対する退職慰労金贈呈の件

 議長から、本定時株主総会終結の時をもって取締役を退任する A 氏及び監査役を退任する 甲 氏は招集通知添付の株主総会参考書類の略歴とおり取締役、監査役として当社事業の発展に貢献されたので、その在任中の功労に報いるために退職慰労金を贈呈したく、またその具体的な金額、贈呈の時期、方法等は当社の定める一定の基準に従い妥当な範囲内で、退任取締役については取締役会に、退任監査役については監査役の協議に一任されたい旨を述べて、審議を求めたところ、出席株主の議決権数の絶対多数の賛成(議決権行使書面による賛成株主○○○○名、議決権数○○○○○個を含む。)をもって原案どおり承認可決された。

第○号議案 退任取締役及び退任監査役に対する退職慰労金贈呈の件

 議長は、本議案について、本定時株主総会終結の時をもって任期満了退任する取締役 A ・・・及び E の○名ならびに監査役 甲 、 乙 の2名に対し、その在任中の功労を報いるため、当社所定の基準に従い、取締役合計○○○○○万円以内及び監査役合計○○○○万円以内で退職慰労金を贈呈することとし、その具体的金額、支払時期、方法等は、取締役については取締役会の決議に、監査役については監査役の協議にそれぞれ一任したい旨別添株主総会参考書類に基づいて説明した。
次いで、議長は本議案についての賛否を諮ったところ、出席株主の議決権数の過半数の賛成(議決権行使書面による賛成株主○○○○名、議決権数○○○○○個を含む。)を得たので、本議案は原案どおり可決された。

 後者の具体例では、役員別の支払総額を記載しています。そして、実務においては、役員別の支払総額までの記載をしているのはごく少数にとどまっています。
 しかし、昨今は、情報開示法の制定やコンプライアンス、企業の透明性等の観点から、情報はできる限り開示していくべきという流れがありますので、具体的贈呈金額の開示は進めていくべきです。


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