決議事項の上程及び審議(9) ~議題提案権と議案提案権~

2014年4月23日 掲載

○議題と議案の違いについて

 株主総会においては、株主から決議する事項において提案することを会社法では認めています。それが議題と議案です(会社法303条1項304条)。

 議題とは、「株主総会の目的である事項」(会社法304条参照)のことをいい、取締役会設置会社においては、総株主の議決権の百分の一以上の議決権又は三百個以上の議決権を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主に限り、取締役に対し、一定の事項を株主総会の目的とすることを請求することができます(会社法303条2項)。ただし、公開会社でない取締役会設置会社については、株主は6ヶ月以上保有し続けなくても議題を提案することができます(会社法303条3項)。
 なお、総株主の議決権割合については、百分の一を下回る割合を定款で定めた場合にあってはその割合以上の議決権で、議決権の個数については、三百個を下回る数を定款で定めた場合にあっては、その個数で、議決権の保持期間については、六箇月を下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間というように、定款で定めることで条件を緩和することができるようになっています。

 会社が適法な株主の提案を取り上げない場合には、取締役等に対し100万円以下の過料に処せられます(会社法976条19号)

 他方、議案とは議題についての具体的な事項であって、その事項について議決権を行使することのできる株主であれば、原則株主全員が行使することができます(会社法304条)。

 議題と議案の違いについては分かりにくいですが、具体例としては、「剰余金処分の件」「取締役及び監査役選任の件」「退任取締役及び退任監査役に対する退職慰労金贈呈の件」「自己株式処分の件」等が議題に当たります。
 そして、「取締役及び監査役選任の件」という議題のうちの「A氏を取締役に選任すること」ということが議案に当たります。

 このように、議題と議案はそれぞれ株主の権利として認められている以上、株主総会において議題提案権あるいは議案提案権が行使された場合には、その旨の記録を株主総会議事録にしておく必要があります。

○議題提案権の具体例

第○号議案(株主提案) 定款の一部変更の件

 議長は、提案株主に提案理由の補足説明を3分以内で行うよう求め、質問についてはその補足説明終了後に受ける旨を述べたところ、××株主から本議案についての補足説明が行われた。
 続いて、議長は、株主提案である本議案に対する取締役会の意見を説明した。次に、株主(○○番)から□□□との質問があり、社長が△△△との回答をした。
 次に、議長は、議案の採決を行う旨宣し、本議案の賛否を問うたところ、本議案は、出席株主の議決権の90%を超える反対をもって否決された。

 議題については、株主総会の日の八週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までに議題を株主総会の目的とするよう請求しなければなりません(会社法303条2項後段)。したがって、会社側は株主総会開催時点では、議題提案権が行使されたのを把握していることから、株主総会においては提案株主に補足説明という形で説明をしてもらうこととなります。
 また、この具体例は、「第○号議案(株主提案) 定款の一部変更の件」という形で議題と議案を兼ねたような形になっており、このような場合には、この具体例のように記載することが通常です。


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