決議要件と採決の結果(2)

2014年6月4日 掲載

 前回は、決議の種類と採決の方法についての説明をしました。今回は、採決があった場合の株主総会議事録への記載方法について具体例を交えながら説明していきたいと思います。

○議事録への記載

 株主総会議事録への記載について、実務的には6パターンくらいに分けることができます。

(1)議決権行使書を含む賛成多数を記載

 本議案について、その賛否を諮ったところ、書面による議決権行使を含め、賛成多数をもって原案どおり承認可決した。

実務的には「承認可決」と記載することが多いですが、「承認」と「可決」は同義であり、「承認」は法令用語として適切でないため、理論的には「可決」だけでいいのではないかと思います。

 本案の賛否を議場に諮ったところ、書面による議決権行使を含め大多数の賛成を得て本案は原案どおり可決された。

(2)「賛成多数」、「大多数の賛成」、「絶対多数が賛成」、「圧倒的多数が賛成」との記載

 これらの記載では、出席株主の議決権の大多数なのか、出席株主数の大多数なのかはっきりしません。したがって、これらの記載については、議決権の多数なのか、株主数の多数なのか、主語を明確にすべきです。
 定款変更等、「出席株主の議決権の3分の2以上」となっている場合があるので、主語は明確にしておくべきです。

利益処分案承認の件
 ・・・・・の条件を付議したところ、圧倒的多数が賛成した。
取締役選任の件
 ・・・・・原案どおり選任願いたい旨を諮ったところ、圧倒的多数が賛成し、取締役にはA氏が選任され、就任を承諾した。

(3)「出席株主の2分の1以上の大多数の賛成」と記載しているもの

 普通決議・特別決議は、それぞれ「出席株主の議決権の過半数」、「出席した当該株主の議決権の3分の2以上に当たる多数」というのが議決要件となっております。つまり、出席株主数ではなく、出席株主の議決権数で判断されます。しかし、下記の記載では「出席株主」としか記載しておらず、「出席株主数」ととられかねません。したがって、「出席株主の議決権」であることを明確にしておくべきです。

利益処分案承認の件
 ・・・・・の条件を付議したところ、異議なく、委任状を含めた出席株主の2分の1以上の大多数の賛成を得たので、原案どおり可決された。
取締役選任の件
 ・・・・・原案どおり選任願いたい旨を諮ったところ、異議なく、委任状を含めた出席株主の2分の1以上が多数が賛成し、取締役にはA氏が選任され、就任を承諾した。
定款の一部変更の件
 ・・・・・議案の審議について議場に諮ったところ、異議なく、委任状を含め出席株主の3分の2以上の多数の賛成を得たので、原案どおり承認された。

 この記載は、「2分の1以上」と記載していますが、普通決議の「過半数」は2分の1では足りず、2分の1を超えなければならないことから、「2分の1を超える」と記載すべきです。他方、特別決議の場合には「出席した当該株主の議決権の3分の2以上に当たる多数」ですので、記載例のとおり「3分の2以上の多数の賛成」との記載でも問題ないと思われます。

 今回はパターン3までの説明をしました。次回は、残りの3パターンの説明をしたいと思います。


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