決議要件と採決の結果(3)

2014年6月11日 掲載

 前回は実務的に用いられる記載例の6パターンのうちの3パターンまでの説明をしました。今回は残りの3パターンについての説明をしたいと思います。

○議事録への記載

(4)議場に諮ったことと議案が可決されたことは分かるが、株主の賛成の状況が分からないもの

利益処分案承認の件
 ・・・・・の条件を付議したところ、原案どおり可決された。
取締役選任の件
 ・・・・・原案どおり選任願いたい旨を諮ったところ、原案どおり可決し、取締役にはA氏が選任され、就任を承諾した。

 普通決議と特別決議で決議要件が異なるものもあるので、その要件を満たしたものであるという、株主の賛成状況は記載しておくべきであると思われます。

(5)出席株主の議決権の大多数なのか、出席株主数の大多数かは分からないが、出席株主などの報告と併せると賛成状況が分かるもの

 「書面による議決権行使の結果(前記)を含めて賛成大多数」、「議決権行使書及び電磁的方法による議決権行使を含め大多数の賛成」(議案別賛否内訳は前に報告済み)という記載をする場合があります。このような記載は、報告等と併せると賛成状況は分かります。しかし、株主への分かりやすい記載という観点からは、賛成状況を一見して分かるように記載すべきではないかと思います。

報告事項の後で、引き続き、議長から次の通り書面投票の結果についての報告があった。

 第1号議案   賛成 [     ]個  反対 [     ]個
 第2号議案   賛成 [     ]個  反対 [     ]個
 第3号議案   賛成 [     ]個  反対 [     ]個

賛否を議場に諮ったところ、書面による議決権行使の結果(前記)を含めて賛成大多数をもって原案どおり可決した。

・・・・・旨提案理由を説明し、それを議場に諮ったところ、出席株主の大多数(議決権行使書面による原案賛成の株主[   ]名、その議決権数[   ]個を含む、なお、反対[   ]名、議決権[   ]個)がこれに賛成したので、本議案は原案どおり可決された。

 主語が「出席株主」となっていますが、この記載例では後のかっこ書きで「出席株主の議決権数」であることの推測がつきます。しかし、これでは不明確であるので、できるだけ明確に「出席株主の議決権」と記載すべきではないかと思います。

(6)「出席株主の議決権の多数」と記載しているもの。

 この記載は、普通決議・特別決議の法律の要件である「出席株主の議決権」という用語に沿っていることから、妥当な記載であると思われます。

剰余金処分の件
 議長は本議案の審議を求めたところ、質疑がなかったので、議長は本議案についての賛否を諮ったところ、出席株主の議決権の半数を超える賛成(書面による原案賛成の株主[   ]名、その議決権数[    ]個、電磁的方法による原案賛成の株主[    ]名、その議決権数[    ]個を含む)を得たので、本議案は原案どおり可決された。

 「電磁的方法」については、「インターネット」と記載されている場合が多々見られますが、インターネットは電磁的方法の典型的なものであることから、「インターネット」という記載であっても問題はないと思われます。

・・・・・議案の賛否を議場に諮ったところ,出席株主の議決権の半数を超える賛成があったので、原案どおり可決された。


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