決議事項 ~計算書類等の提出及び業績開示の承認1~

2014年9月17日 掲載

○計算書類等の提出及び業績開示の承認

 株式会社は、事業年度ごとに、計算書類・事業報告とその附属明細書を作成しなければなりません(会社法435条2項)。計算書類とは、貸借対照表損益計算書株主資本等変動計算書、及び、個別注記表を指します(会社法435条2項会社計算規則59条1項)。これらの計算書類・事業報告等は、会社によって作成され、監査を受けた後に、取締役会の承認が受けた上で(会社法436条3項)、定時株主総会に提出されます(会社法438条1項)。
 したがって、取締役会の承認が必要である以上、計算書類・事業報告等の承認が取締役会でなされた場合には、取締役会議事録の決議事項にその承認があった旨を記載する必要があります。

○誰が計算書類・事業報告等の書類を作成するのか?

 計算書類・事業報告等の書類を作成するのは、会社法や会社法施行規則等に定めはありませんが、一般的には代表取締役であると考えられています。なお、委員会設置会社においては、取締役会の決議によって計算書類・事業報告等の書類を作成するという業務執行の決定を執行役に委任することができるとされています(会社法416条4項本文)。

○計算書類・事業報告等の監査を受けるために取締役会決議は必要か?

 計算書類・事業報告等を作成後に監査を受けるために取締役会の決議が必要か否かについて会社法上、特に規定は置かれていません。この点、計算書類・事業報告等の監査を受けるために監査役・会計監査人に提出する行為がどのような性質を有するかで、取締役会決議の要否が変わってきます。

  1. 代表取締役の業務執行権限と考える見解
    計算書類・事業報告等の監査を受けるために監査役・会計監査人に提出する行為が代表取締役の業務執行権限と考えた場合には、計算書類・事業報告等の提出をするか否かは、取締役会の決議なしに代表取締役の業務執行権限として代表取締役が判断することができることとなります。
  2. 会社法362条4項柱書「その他の重要な業務執行」と考える見解
    計算書類・事業報告等の監査を受けるために監査役・会計監査人に提出する行為が会社法362条4項柱書「その他の重要な業務執行」と考えた場合、計算書類・事業報告等の提出行為は、重要な業務執行として、その決定を代表取締役に委任することはできず、取締役会決議によって決めなければなりません(会社法362条4項)。

 会社法の前身である旧商法では、附属明細書の作成を取締役に委任することができないとするのが通説であったことや、同じく旧商法では監査の前に取締役会の承認を義務付けていたことからすると、現在においても計算書類・事業報告等の提出行為は、「重要な業務執行」として取締役会の承認が必要であると考えるべきです。
 したがって、計算書類・事業報告等の提出行為について取締役会の承認を得た場合には、取締役会議事録についてもその旨の記載をする必要があります。

○上場会社における業績予想や役員人事等

 上場会社においては、証券取引所に業績説明を行うと同時に記者クラブにも「決算短信」を配布して発表をしています。そして、「決算短信」には、来期の業績予想や役員人事等の重要事項が記載されています。来期の業績予想や役員人事等の重要事項は、計算書類・事業報告等と同じく「重要な業務執行」(会社法362条4項柱書)に当たることから、取締役会での承認を得るべきです。そして、取締役会での決議がなされた場合には、その旨を取締役会議事録に記載することとなります。

 次回は、今回の続きとして具体例を交えつつ説明をしていきたいと思います。


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