署名又は記名押印2

2015年6月24日 掲載

 取締役会議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならないことについては前回指摘しました(会社法369条3項)。本日は、署名又は記名押印の説明の続きをしたいと思います。

○異議をとどめない場合

 取締役会議事録に異議をとどめないものは、取締役会におけるその決議に賛成したものと推定されます(会社法369条5項)。したがって、取締役が決議に反対した場合には、取締役会議事録に異議をとどめた旨を記載しなければなりません。
 異議を唱えたにもかかわらず、取締役会議事録にその旨の記載がされていないときは、反対の証拠を挙げてこれを覆さなければなりません。
 しかし、訴訟においては、議事録中に署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定されるので(民事訴訟法228条4項)、これに対してまた反対の証拠を挙げて覆すという複雑な法律問題が生じます。したがって、取締役がその決議について異議をとどめた場合には、その旨を取締役会議事録に正確に記載すべきです。

○署名が必要な者は?

 会社法上、「出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。」(会社法369条3項)と規定されているので、出席取締役・監査役には署名義務が生じます。
 また、取締役会の途中で退出した取締役・監査役に署名義務が生じるかという問題があります。会社法で署名又は記名・押印を求めている趣旨は、署名又は記名押印をすることで、取締役・監査役が取締役会に出席したことを明らかにすることにあります。取締役会の途中で退出した場合にも出席したことは確かなので、途中退出の取締役・監査役にも署名又は記名押印が必要であるといえます。
 この点について、会社法・会社法施行規則上、規定はありませんが、途中で退出した旨を取締役会議事録に記載する方が趣旨に沿ったものになるのではないかと思われます。


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