企業法務の仕事


○企業法務とは?

 企業法務とは、「企業の事業活動に関わる法律上の業務」の総称です。企業の設立、取引、人事・労務、そして解散に至るまで、すべての活動に法律は密接に関わっています。企業法務の仕事は企業経営上、非常に重要な役割を担っているといえます。


○臨床法務から予防法務、戦略法務へ

 企業法務の仕事としてまず挙げられるのは、法的トラブルへの対応です。取引先の倒産やクレームの発生といった問題が発生した場合に、裁判を含めた法的対応を行い、問題を解決することが求められます。このような法務の仕事を「臨床法務(治療法務・裁判法務)」といいます。
 次に、法的トラブルを未然に防ぐための対応があります。契約締結前に契約書をチェックし、紛争の発生を予防するために条項の追加・修正を行うことや、従業員にコンプライアンス教育を行い、不祥事を防ぐことが含まれます。このような法務の仕事を「予防法務」といいます。
 最後に、企業経営上の重要な意思決定に参加し、企業の意思決定にかかわる法律事務を行うことが挙げられます。企業の買収や合併(M&A)、新製品の開発などにあたり、法的リスクの分析や効果的な知的財産権の活用方法を提案することで、企業価値を高める意思決定のサポートを行います。このような法務の仕事を「戦略法務」といいます。

 現在でも、臨床法務の重要性は変わりませんが、予防法務、戦略法務へと法務の活躍の場が広がっているのです。


○独立した法務部へ

 従来、総務部や企画部の一部門(「法務課」、「法規課」)として設置されていた法務部門ですが、法務業務の重要性が認識されるようになり、独立した「法務部」として設置される例が増えてきました。
 商事法務研究会の調査によると、上場企業等約1,000社のうち、42%が法務部を設置しています。


○法務の仕事

 法務の仕事は多岐にわたりますが、代表的な業務を挙げると、以下のようになります。知的財産や内部統制については、別部署を置いている企業も少なくありません。

  • 契約関連業務(契約書の作成、審査、交渉、手続)
  • 株主総会、取締役会についての準備、手続
  • 不動産業務(担保管理、建設プロジェクト運営)
  • ライセンス取得関連(許認可)
  • 法律相談、訴訟・係争対応
  • アライアンス、M&A等の契約ドラフト、交渉
  • リスクマネジメント(社内的危機管理)
  • 内部統制、コンプライアンスプログラムの策定と管理
  • 知的財産(法的手続、管理)、商標調査
  • 顧問弁護士、官公庁との交渉
  • 立法・判例動向の調査、分析とビジネスへの適切なフィードバック
  • コーポレートガバナンス体制構築の検討

○法務で求められる人材

 企業法務担当者には、幅広い法律知識に加え、業務の実情に精通していることやビジネス推進のための発想・センスが求められます。つまり、「法律上こうなっている」というだけではなく、企業のビジネスを前進させるための、現実的な解答が求められるわけです。
 また、企業法務担当者には、社内・社外の利害関係者との調整能力も求められます。

 こうした観点から、法律知識だけでなく、コミュニケーション能力バランス感覚を持った人が法務部で求められているといえるでしょう。

 実務的な能力としては、英語力リサーチ能力文書作成能力が求められます。