二重価格表示

2012年4月6日 掲載

 二重価格表示とは、実売価格に比較対照価格を併記する価格表示方法のことです。「通常価格30,000円のところを特別価格9,980円」のようなものがこれにあたります。
 このような表示は、消費者に対して、実際の販売価格や競争事業者の販売価格よりも安いと誤認させるおそれがあることから、表示方法に規制がなされています(不当な表示の禁止。不当景品類及び不当表示防止法4条1項2号)。

 具体的に禁じられているのは、

(1)違う商品の価格を比較対照価格として表示する

(2)虚偽の価格、曖昧な価格を比較対照価格として表示する

という2つの行為です。

 (1)の商品の同一性は、銘柄、品質、規格等から判断しますが、新品と、中古品や展示品、傷物、旧型のものとは違う商品と考えます。この場合、中古品等であることを明示したうえで販売する場合は問題ありません。
 また、生鮮食料品は同一性の判断が難しいので、タイムサービスなどを除き基本的に二重価格表示ができません。

 次に、(2)については、類型ごとに考えていきます。

1. 過去の販売価格を比較対照価格とするとき

 この場合、比較対照価格は「最近相当期間にわたって販売されていた価格」である必要があります。
 最近相当期間というのは、基本的に、セール開始前8週間で4週間以上、販売期間がそれ以下の場合は2週間以上と考えられています。
 これに外れるものを比較対照価格にしたいときは、実際の販売期間などといった価格の内容を明確に示しておかねばなりません。

 また、セールの実施が決まった後(セール価格が決まった後)に販売を開始した商品は、「過去の販売価格」といっても実績作りにすぎないため、二重価格表示は認められません。

2. 将来の販売価格を比較対照価格とするとき

 「来週からはこの価格、今だけお買い得!」などの表示はよく見かけますが、将来の価格は変動しうるので、一般的に二重価格表示は不適切とされています。
 表示の際は、将来の価格に十分な根拠(ある程度の期間実際に販売する価格であるなど)が必要です。セール期間経過後も値上げの予定はない、値上げ後の価格で販売する期間がごく短い、という場合は根拠なしとみなされます。

3.希望小売価格を比較対照価格とするもの

 希望小売価格とは、製造業者等が設定し、予め公表している商品価格で、「広く知れている」ことを根拠に二重表示が許されます。
 したがって、製造業者が小売業者に対してのみ呈示している参考小売価格や参考上代などは、基本的に比較対照価格に書くことができません。比較対照価格に書けるのは、カタログなどで小売業者に広く呈示されている場合だけです。

 なお、プライベートブランドや工場直販など、製造業者と小売業者が同じ場合や、製造業者が小売業者の意向を受けて価格設定した場合は、希望小売価格とは名ばかりで結局小売業者による価格なので、比較対照価格に表示してはいけません。

4.競争事業者の販売価格を比較対照価格とするもの

 「A電器店で65,000円のところを58,000円」と書かれていれば、消費者は「65,000円=他事業者の同商品に関する最近時の販売価格」と認識します。
 そのため、特定の競争事業者の販売価格と比べる場合は、最近時の販売価格を正確に調査し、その事業者の名称を明示しなければなりません。
 ただし、これらが満たされていても、東京と大阪など商圏が異なり消費者が購入する機会のない店舗の販売価格は比較対象とできないので注意が必要です。

5.他の顧客向けの販売価格を比較対照価格とするもの

 同じ商品でも顧客の条件(会員特典、購入時期に応じた特典など)によって販売価格が違うときは、その顧客の条件の内容等について明確に表示します。
 ただ、非会員価格が比較対照価格・会員価格が実売価格とされていても、会員登録が簡単でほとんどの人が実売価格で買うものについては、実情に合わないので二重価格表示をしてはなりません。

 また、需要のピークとオフで価格差が大きいうえに、ピークが特定の時期に限定されている場合、このピーク時の販売価格を平均的な価格であるかのように比較対照価格に書くことも認められません。たとえば、ホテルが「宿泊料金(ツイン1泊2日食事なし)標準料金1人当たり40,000円のところ○月○日~○日に限り20,000円」とする場合において、標準料金が適用されるのが、宿泊客の多い、特定の期間のみであるような場合は、上記のような表示は認められないわけです。


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