決議要件と採決の結果(1)

2014年5月28日 掲載

 決議事項に関する審議の後、その事項について採決をすることとなります。決議事項の承認可決するためには、会社法の規定に従った決議要件を満たす必要があります。そして、採決においては、普通決議と特別決議によって可決承認となされることが多いです。

○決議要件

◆普通決議

 普通決議とは、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う決議のことです(会社法309条1項)。つまり、「定足数:議決権の過半数、決議:出席者の議決権の過半数」となっています。
ただし、定足数は定款で軽減・排除をすることが可能です。したがって、実務上、多くの会社では、定款により定足数を排除して、出席株主の議決権の過半数で決議できるとしているようです。
 役員の選任・解任の場合については特別の規定が設けられています。すなわち、定足数については3分の1以上としなければならず、定足数を排除することはできません(会社法341条)。この点には注意が必要です。

◆特別決議

 特別決議とは、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行わなければならない決議のことを指します(会社法309条2項本文)。つまり、「定足数:議決権の過半数、決議:出席株主の議決権の3分の2」となっています。
 特別決議の場合には、定款によっても定足数を完全に排除することはできず、3分の1以上に軽減することしかできません(会社法309条2項本文かっこ書)

○採決の方法

 採決については、挙手・起立・投票その他いずれの方法によっても、議決判定さえできれば構いません。実務上は拍手による場合が多いようです。
 議決権行使書により過半数の賛成を得ているとき、その他圧倒的多数の賛成を得られることが確実な場合は、いちいち挙手や起立の方法をとるより、大多数の拍手や発声でもって議場の賛意を示す形にした方が良いのではないかと思われます。拍手による場合には、通常2~3分で採決が終了するため、株主が拍手をする等賛意を表明している間に議案を次々と可決していくのが一般的です。議長として敢えて一議案ずつ区切って拍手の止むのを待つ必要はありません。
 ただし、議決権行使書により過半数の賛成を得られていない場合等、その採決が可決されるか微妙な情勢にある場合には、人数把握の確実な採決の方法を選ぶべきです。そうでなければ、株主総会決議取消事由(会社法831条1項)に当たる場合もあるので、注意が必要です。

 次回は、株主総会議事録への記載方法について具体例を入れながら説明していきます。


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