変形労働時間制

2011年12月27日 掲載

 変形労働時間制とは、単位期間について、労基法上の労働時間の規制を、1週および1日単位ではなく、単位期間における週あたりの平均労働時間によって考える制度です。

 労働基準法は、労働時間について休憩時間を除き1日8時間以内、週40時間以内と定めています(同法32条)。同法36条に基づく協定(いわゆる36協定)を使用者と労働者の間で締結すれば割増賃金を支払ったうえで時間外労働をさせることも可能ですが、月初月末はかなり仕事量が多いが、月の半ばには仕事が少ないというような職場の場合、使用者にとっては割増賃金の負担が増え、効率が悪くなります。
 そこで、一定の条件の下、単位期間を平均して法定労働時間を超えなければ、期間内の特定の日または週において法定労働時間を超えて労働させることができるようにしたのです。

変形労働時間には、

  1. 1か月単位の変形労働時間制 (労働基準法32条の2)
  2. 1年単位の変形労働時間制 (同法32条の4および4の2)
  3. 1週間単位の非定型的変形制 (同法32条の5)

 の3種類があり、単位期間の長短により弾力化の程度や労働者に与える影響が異なるために、各制度にはそれぞれ異なる要件が設けられています。

 1か月単位の変形労働時間制を導入するためには、労使協定または就業規則等によって定め、これを労働基準監督署長に届ける必要があります。
 そして、上で述べたとおり、単位期間の平均で法定労働時間を超えてはいけないのですから、月間労働時間が、30日の月は171.4時間、31日の月は177.1時間を超えないように勤務割をしなければなりません。また、1日8時間を超える日、1週40時間を超える週は、就業規則等で特定しておかなければなりません。
 1年単位の変形労働時間制を導入するためには、労使協定を締結する必要があり、その労使協定には、対象期間(1か月を超え1年以内)、対象期間における労働日および当該労働日ごとの労働時間等を定める必要があります。このようにして締結された協定書は労働基準監督署に届け出るとともに、労働者に周知させなければなりません。
 この制度を導入した場合であっても、1日の労働時間は10時間まで、1週の労働時間は52時間まで、1年の労働日数は280日までに制限されます。また、連続して働かせるのは原則として6日を限度としなければなりません。さらに、対象期間が3か月を超える場合、48時間を超える週は連続して3週が限度となります。
 1週間単位の変形労働時間制を導入するためには、労使協定を締結する必要があり、締結された協定書を労働基準監督署に届け出なければなりません。もっとも、対象となる事業場が労働者30人未満の小売業・旅館・飲食店などに限定されていることもあり、この制度は実際上あまり利用されていません。


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