通勤中の事故と労災

2011年12月27日 掲載

 通勤途中の事故であっても、一定の条件を満たせば労災保険の対象となります。事故時の状況によって、業務上通勤災害として認められる場合と、通勤災害として認められる場合とが考えられますので、分けてご説明します。


1、業務上通勤災害

 まず、通勤の途中で使用者のために業務を行っていて事故に遭ったような場合や、外勤など業務と通勤の区別が困難な場合には、業務上通勤災害として、通常の労災としての保護が受けられます。つまり、労災保険上の各補償給付、解雇制限(労働基準法19条)、3日目までの使用者による直接の休業補償(同法76条)が受けられます。


2、通勤災害

 業務上通勤災害にあたらなくても、労働者が、「就業に関し、住居と就業の場所との間を、合理的な経路および方法により往復」していたと認定されれば、通勤災害として労災保険の給付が受けられます(労働者災害補償保険法7条1項2号、2項)。

 「合理的な経路及び方法」とは、会社と自宅との間を往復する場合に、一般に認められる経路及び方法のことをいいます。
 まず、「合理的な経路」については、労働者が通勤のために通常利用する経路はもちろん、通常利用することが想定される経路(渋滞時の迂回路など)も「合理的な経路」といえます。保育所等への送り迎えも、そのような立場の労働者であれば、就業するためにとらざるを得ない経路であるので、「合理的な経路」といえるでしょう。
 次に、「合理的な方法」については、通常用いられる交通方法を通常の方法で使用する限り、当該労働者が平常用いているか否かにかかわらず一般に合理的な方法と認められます。したがって、通常は電車通勤である労働者が、その日だけたまたま自転車通勤をして事故に遭ったような場合でも、一般的に「合理的な方法」といえますが、泥酔時に自動車や自転車を運転するような場合は、「合理的な方法」とはいえないことになります。


 以上に対して、通勤のために通常利用する経路を逸脱・中断していても、通勤の実態からして、日常生活上必要な行為とされる一定の範囲の行為であってやむを得ない最小限度であれば、通勤と認められます。たとえば、夕食の惣菜などの購入、独身労働者が食事に立ち寄る場合、病院の受診、理髪店や美容院への立ち寄りなどの途中であれば、通勤と認められます。
 逆に、通勤災害と認められない例としては、友人宅で麻雀をし、翌朝そこから直接出勤する場合や、特に理由もないのに著しく遠回りをする場合などが挙げられます。

 通勤災害が認められた場合、労災保険の給付内容は業務上通勤災害の場合と異なりません。しかし、業務上通勤災害と異なり、解雇制限などの労働基準法上の労働災害に関する規定の適用はありません。そのため、休業補償は4日目からしか支給されず(労働者災害補償保険法14条1項)、長期間休業すると解雇になるおそれがあります。


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