賞与の支給日在籍要件

2011年12月27日 掲載

 支給日在籍要件とは、賞与を支払う場合、その査定対象期間の全部又は一部に勤務しているだけでなく、賞与の支給日に在籍していることを支払要件とすることです。

 このような賞与の支給日在籍要件について、判例は合理性のあるものとして有効としています(大和銀行事件。最高裁昭和57年10月7日判決など)。
 賞与は給与と違って、会社に支払いの義務はなく、その支給条件(支給の有無・支給額・支給対象者等)は会社の裁量に委ねられています。また、労働者は、退職の時期を自由に決めることができるので、このような取扱いを認めてもさほど酷ではありません。したがって、支給日在籍要件が労使間の慣行となっているか、就業規則等に記載されている限り、賞与の支給日在籍要件も有効といえます。
 また、定年退職、契約期間満了のように、退職日を労働者が自分で自由に決めることができない場合にも賞与の支給日在籍要件を適用することができるかについて、裁判例はこのような場合でも要件は有効と判断しています(定年退職につき、カツデン事件。東京地裁平成8年10月29日判決)。ただ、労働者が自発的に退職するのに比べると、不利益回避の方法がなく、不支給の合理性が薄くなりますので、一部支給などの条項を入れるのもひとつの方法といえます。

 これに対し、本来の賞与支給日までは在籍していたものの、賞与の支払いが遅れ、実際の支払日の前に退職してしまったケースでは、賞与の支払いをすべきとの判断をしています(ニプロ医工事件。最高裁昭和60年3月12日判決)。


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