約款

2011年12月27日 掲載

 約款とは、不特定多数の利用者との契約を定型的に処理するためにあらかじめ作成した契約条項のことです。交通機関のほか、銀行、保険、郵便、電気、ガス、水道、コンピュータソフトなど、不特定多数の利用者との契約が予定されている事業で広く利用されています。
 「約款」というタイトルのほか、「利用規約」というタイトルが用いられることがあります。一般的な利用の仕方としては、約款のほうが上位規定として用いられることが多いですが、法律上の効果としては変わりありません。

 企業にとっては、契約条件交渉の手間が省けますので大変便利といえます。
 また、取引の相手方にも利点があり、本来ならばいちいち自分で交渉しなければ得られないはずの条件も一律に与えられるため、交渉力が不足している場合でも、他者に比べて不利な扱いを受ける心配がなく、平等の取引を確保できるのです。

 ただ、「契約の相手方」といっても、消費者の立場では、企業が一方的に決定した約款に従って契約するかしないかを決める以外に方法がありません。そのうえ、定款の内容も企業に有利な条件になっているおそれがあるため、とても同等・万全とはいえない状況です。
 こうした契約上の格差を是正するために、約款内容の規制や、内容の開示を強制する行政的規制のほか、消費者契約法により、一定の約款条項を無効とする規制がかけられています。
 行政的規制としては、約款に主務大臣の認可や届出を求めるものが挙げられます。例えば、保険事業の営業免許申請には、主務大臣による約款の審査が必要です(保険業法4条2項3号)。
 消費者契約法による規制としては、一方的に消費者に不利な条項が約款に含まれている場合,一定の条項を無効とするものが挙げられます(消費者契約法第8~10条)。例えば、事業者が債務を履行しなかったせいで生じた損害に関して、賠償責任の全部を免除する条項などがこれにあたり無効となります(同第8条1項1号)。
 ちなみに、行政規制と消費者契約法は併せて適用可能です。

 また、現在改正が検討されている民法では、約款を法律上定義したうえで、契約として法的拘束力をもたせるための要件(組入要件)に関する規定を置くことが検討されています。組入要件に関する規定が置かれた場合、要件を満たさない約款は法的拘束力を有しないことになるため、約款をどのように定義するか、また、組入要件の内容をどのようなものにするのかについて、注目されています。


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