職場における携帯電話の使用

2012年9月6日 掲載

職場における携帯電話の使用については、(1)私用の携帯電話の使用を制限することができるか、(2)緊急時の連絡のために、携帯電話の電源を入れておくように会社が命じることができるか、という点が問題となります。

(1) 私用携帯電話の使用制限

 私用携帯電話の使用については、一般的に従業員は勤務時間中、会社に対して業務専念義務を負っていますから、勤務時間中に私用携帯電話を使用して通話をしたり、メールの送受信を行ったりすれば、業務専念義務違反の問題が生じます。
 また、現在の携帯電話はカメラ機能だけでなく、アプリの導入によって、様々な目的に使用することができるため、情報漏えい対策としても、私用携帯電話の使用を制限する必要性があります。

 このことから、就業規則において私用携帯電話の使用を制限することは認められると考えられます。具体的には、就業時間中は私用携帯電話の電源を切る、所定の場所(ロッカーなど)に保管する、カメラのレンズ部分に目隠しシールを貼る、といった制限の仕方が考えられます。

 このような使用制限に違反した場合に、一時的に携帯電話を預かったり、中身を確認することは、違法とまではいえないでしょうが、必要性もないのに就業時間後も携帯電話の没収を継続することは許されないと考えられます。

(2) 携帯電話の電源を入れておくように命じることの可否(スイッチ・オン命令)

 業務上の必要性がある場合の緊急連絡手段として、就業時間外や休日も(特に会社支給の)携帯電話の電源を入れておくように命じることができるか、という問題です。仮にこのような命令が認められるとすると、労働者はいつかかってくるかわからない電話に対応しなければならなくなり、十分な休息が取れないおそれがあるからです。

 この点については、スイッチ・オン命令を出すことについて、労働者との間で合意があり、それに伴う不利益に対する代償措置(手当の支給等)が取られていることを前提に、必要な範囲に限定して認められると考えられます。
 スイッチ・オン命令が出されていたとしても、時間的・場所的拘束が生じていない以上、使用者の指揮命令下にあるとはいえず、賃金の発生する労働とはいえません。しかしながら、上記のような労働者の心理的負担を考えると、無制限に認められるべきものではないからです。また、有給休暇中など、労働の義務が免除されている日については、スイッチ・オン命令について、合意がなされている場合であっても、命令することが許されないと考えられます。こういった休暇のときにまで命令を認めてしまうと、休暇を認めた意味がなくなってしまうからです。


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