感染症による就業制限

2013年3月14日 掲載

 インフルエンザをはじめとする感染症に感染した従業員の就業を制限、あるいは禁止できるかについては、労働安全衛生法68条および感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症予防法)11条に定めがあります。

 まず、労働安全衛生法68条は、「伝染性の疾病その他の疾病で、厚生労働省令で定めるものにかかつた労働者については、厚生労働省令で定めるところにより、その就業を禁止しなければならない。」と規定しています。そして、詳細については、労働安全衛生規則61条が以下のように定めています。

  • 病毒伝ぱのおそれのある伝染性の疾病にかかつた者
  • 心臓、腎臓、肺等の疾病で労働のため病勢が著しく増悪するおそれのあるものにかかつた者
  • 前各号に準ずる疾病で厚生労働大臣が定めるものにかかつた者

 感染症の場合、「病毒伝ぱのおそれのある伝染性の疾病にかかつた者」の解釈が問題となりますが、この点について、厚生労働省は「伝染させるおそれが著しいと認められる結核にかかっている者」であるとしています(平成12年3月30日・基発第207号)。したがって、結核以外の感染症については、同法による就業禁止にはあたらないことになります。
 ただ、同法は、労働者の安全・衛生を確保するとともに、病気を理由に安易に就業を禁止し、就業の機会を失わせないように配慮することを求めていることに留意すべきでしょう(昭和47年9月18日・基発第601号の1)。

 続いて、感染症予防法18条2項は、一定の感染症について、その患者を一定の業務に就かせることを禁止しています。
 まず、対象となる感染症は、1類から3類の感染症および新型インフルエンザとされています。詳細については、同法6条に規定されていますが、結核、ジフテリア、SARS、コレラ、H5N1型の鳥インフルエンザなどがこれにあたります。一般のインフルエンザなどは該当しません。
 次に、就業制限の対象となる業務ですが、感染症の種類に応じて、多数の者に接触する業務や飲食物に直接接触する業務への就業が制限されています(感染症予防法施行規則11条)。

 以上のように、法令で就業を制限、あるいは禁止している感染症はかなり限定されていますが、それ以外の感染症についても、感染の可能性あるいは影響が比較的小さいというだけで、危険がないわけではありません。感染拡大による業務停滞のリスクを考えると、感染のおそれがなくなるまで休職させるのも一つの考え方といえます。


上記内容は掲載日時点の法律に拠っています。最新の情報ではない可能性がありますのでご注意ください。