株主総会議事録の体裁 3 ~記名押印(2) 実務での対応は?~

2013年9月10日 掲載

 前回の話では、株主総会議事録に記載するのは、原則、作成者の氏名だけでよいということでした。
 しかし、取締役会非設置会社が株主総会で代表取締役を決める時など、議事録に議長や出席した取締役全員の記名押印が必要な場合も存在します。

 ここで問題になるのが、「『出席した取締役全員』というのはどの範囲の人をいうのか?」ということです。

○「出席した取締役全員」とは?

 これは、株主総会が開会されてから閉会するまでの間に出席したすべての取締役を指しています。遅刻や途中退場の者も含まれます。

 ただ、悩ましいのが、この株主総会の中で選任された、新取締役の扱いです。
 株主総会では、代表取締役に加えて取締役も選任することがありますが、この新取締役が記名押印すべきか否かは、選任確定の時期にかかっています。

 もし、欠員の補欠または増員として選任された場合であれば、その場で直ちに就任承諾の意思を表明すれば、総会中に「取締役」になるため、記名押印の義務が生じます。

 一方、通常の選任の場合は、新取締役は、たとえその場で直ちに就任を承諾しても、実際に「取締役」になれるのは総会終結後になります。
 これは、会社法上、前任者の任期終了が総会終結時になっているからです。
  したがってこの場合は、新取締役は出席した「取締役」になれず、記名押印する資格も与えられないということになります(法務省民事局長も同様の見解を示しています)。

○記名押印すべき取締役のうち、本当に「全員」が記名押印しなければならない?

 全員の記名押印がないからといって、議事録の効力に影響が及ぶことはありません。
 その代わり、作成者が記名押印を得られない者の氏名とその理由を記しておくのが相当でしょう。
 登記上も、一定の場合は登記申請を受理して差支えないとしています(昭和28年10月2日民事局長回答)。

○実務ではどうしているの?

 これまで見てきたように、記名押印に関する法令上の条件はさほど厳しくないようです。
 しかし実務では、任意ではありますが、出席取締役の署名や記名押印が要求されていた旧商法の定めに倣い、従来通り総会議事録に署名または記名押印を行っている会社が過半数を占めています。
  その割合は、商事法務研究会「株主総会白書(2010年度版)」によれば63.1%、全国株主懇連合会の「株主に関する実態調査集計表」によれば80.3%にのぼっているのです。

 なぜこんなにも多くの会社が旧法のやり方を踏襲しているのでしょうか?

 まず、総会議事録に出席取締役を記名押印するという実務がすっかり定着していて、定款上もその旨定められていることが考えられます。
 また、記名押印を行うことで、それが原本であることが明確になりますし、内容の信憑性も増して、実務上の便宜が大きいといえます。
 さらに、内容の真正性という観点からは、たとえば、公正証書原本不実記載等(刑法157条)や偽造公文書行使等(刑法158条)等の刑事上の犯罪を立証する際に、記名押印が証拠や民事訴訟法上の証明力(民事訴訟法228条4項)の役割を果たすこということもあるでしょう。

 法に定めはなくとも、こうした点に気を配っておけば、後々のリスクを減らせるかもしれませんね。


上記内容は掲載日時点の法律に拠っています。最新の情報ではない可能性がありますのでご注意ください。