株主総会議事録の体裁 4 ~作成通数~

2013年9月17日 掲載

 株主総会議事録は、会社の重要事項決定の過程をつぶさに記してきたものとして、事実の証明、閲覧謄写など、様々な用途に用いられます。
 不必要に何通も作成することはありませんが、いざ提出という段になって慌てるのも考えものです。一体、何通作成するのが望ましいのでしょうか?

 ここでは、写しと区別するため、代表取締役が一定の内容を表示する目的で最初に作成した、確定的かつ唯一の基本文書を「原本」と呼ぶことにします。
※ 実は、会社法商業登記法では「原本」という用語は使われていません。
 商業登記規則49条3項(登記で用いた総会議事録の返還に関する規定)で「原本還付」という用語が出てくる程度です。

○条文はどう規定している?

 会社法には、総会議事録の作成通数に関する直接の規定はありません。
 ただ、会社は総会議事録を株主総会の日から10年間本店に、その写しを5年間支店に備え置かねばならない(会社法318条2項、3項本文)ことを考えると、一応、原本を一部作成すればこの義務は果たせそうです。

○実務ではどうなっている?

 ところが実務上は、普通の原本の他に、登記用の原本をもう1通作成している会社が多数派であり、その割合は80%にのぼるといわれています。
 なぜこのような方法をとっているのでしょうか?

 その理由は、登記申請時に総会議事録の原本の添付が求められているという事実にあります。
 登記申請時に原本証明した謄本を併せて提出し、原本還付の手続を行えば、登記完了後に原本を返却してもらえますが、登記完了までには時間がかかるため、その間、本店に備え置かれる総会議事録がなくなってしまうということになります。そのような不都合を回避するため、「原本が2つある」という不自然さはあるものの、備え置き用の原本以外に登記用の原本をもう1通作成するのが通例になっています。
 どちらも原本である以上、内容等は同一でなければなりません。取締役等の記名押印を集める手間を考えると、必要に応じて「備え置き用、登記用」を個々に用意するより、一度に2通作成しておく方が便利そうですね。


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