議長の開会宣言

2014年1月7日 掲載

 前回は、株主総会の議事の経過の要領およびその結果(会社法施行規則72条3項2号)とは開会から閉会までの会議の経過の要約であるとして、その概略について説明しました。今回からは各事項について、具体的に記載すべき事柄についての説明に入ります。

○議長の開会宣言の具体例

 まずは、議長の開会宣言について説明します。
 会議は、開会宣言によって始まることから、必ず株主総会議事録に記載する必要があります。実際の運営上、開会宣言がないと会議体の運営として問題があるのはもちろんです。また、仮に開会宣言があっても議事録に記載されないことは、株主総会議事録に開会から閉会までの会議の要約を記載しなければならないとされていることからしても、問題があるといえます。

<典型例>

○○株式会社第×期定時株主総会議事録

 平成○○年6月27日(木)午前10時から○○県○○市○○区△丁目△番△号 当社本店○階大会議室において、○○株式会社第×期定時株主総会を開催した。
 定刻、定款の定めにより取締役社長A議長席につき(議長となり)、開会を宣した。

1,株主の出席状況等
  ・・・・・

 以上をもって、報告及び全議案の審議を終了したので、議長は午前11時30分閉会を宣した。

以上

 記載場所については特に法令上の定めがないことから、冒頭に記載されることもあります。

○○株式会社第×期定時株主総会議事録

 平成○○年6月27日(木)午前10時から○○県○○市○○区△丁目△番△号 当社本店○階大会議室において、○○株式会社第×期定時株主総会を開催した。

 1,株主の出席状況等
  ・・・・・
 2,開 会
  午前○時、A取締役社長議長席につき、開会を宣した。

 以上をもって、報告及び全議案の審議を終了したので、議長は午前11時30分閉会を宣した。

以上

 一方、上記のように「2,開会」の項目を別途設けるなど、株主の出席状況等の後に記載する場合もあります。

◆株主総会の議長の存するときは、議長の氏名(会社法施行規則72条3項5号)

 「代表取締役社長A議長席につき(議長となり)」という記載により、「株主総会の議長の存するときは、議長の氏名」(会社法施行規則72条3項5号)という事項が記載されたこととなります。

 ただ、「株主総会の議長の存するときは・・・」と規定されている通り、会議が開かれない場合には、議長が存しなくてもよいと考えられています。議長が存しなくてもよい場合としては、株主総会の書面決議が挙げられます。

◆議長の選任

 旧商法237条ノ4第1項では「総会ノ議長ハ定款ニ定メザリシトキハ総会ニ於テ之ヲ選任ス」と規定されていました。したがって、ほとんどの会社が定款で、「株主総会は取締役社長がこれを招集し、議長となる」と定めており、この規定は会社法になっても有効です(会社法施行に伴う関係法律の整備等に関する法律66条2項)。
 このように定款で議長を定めることができます。また、「取締役会で選任する」として選任方法を定めることもできます。
 定款で議長についての定めがない場合には、株主総会で議長を選任します。

○問題のある記載例

 定刻、代表取締役社長A氏が議長席についたとき、株主X氏から前もって提出された質問に基づき、代理人による議決権行使及びその株式数などについて質問があり、事務局からこれを説明した。
 その後、議長は開会を宣した。

 会議は開会宣言によって始まるものであって、開会宣言以前に株主の発言を許すことはできません。したがって、議事運営上の問題があるといえます。

 定刻、総務部長Bが司会を担当し、定時株主総会の開催を告げ、本日の議長A取締役社長を紹介した。
 その後、取締役社長Aが議長席につき、開会を宣して議事に入った。

 開会宣言は議長の先遣であり、議長以外の者が開会宣言をすることはできません。
 しかし、この例では、総務部長Bが開会宣言をしたかのような記載になっていることに問題があります。

 このような点に留意しつつ、議長の開会宣言について記載するようにしましょう。


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