監査役の報告

2014年1月22日 掲載

 今回は、「株主総会の議事の経過の要領及びその結果」(会社法施行規則72条3項2号)で記載すべき事項のうち、監査役の報告について説明します。

○監査役の報告は必要か

 公開会社でない株式会社(監査役会設置会社及び会計監査人設置会社を除く。)で、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めた会社の監査役は、取締役が株主総会に提出しようとする会計に関する議案、書類その他の法務省令で定めるものを調査し、その調査の結果を株主総会に報告しなければならないとされています(会社法389条1項、3項)。したがって、公開会社でない株式会社(監査役会設置会社及び会計監査人設置会社を除く。)で、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めた会社の場合には、株主総会において監査役の報告が必要となります。

 一方、上記監査の範囲についての制限のない監査役設置会社の監査役は、取締役が株主総会に提出しようとする議案、書類その他法務省令で定めるものを調査しなければならず、法令若しくは定款に違反し、又は著しく不当な事項があると認めるときは、その調査の結果を株主総会に報告しなければならないとされています(会社法384条)。したがって、法令若しくは定款に違反し、又は著しく不当な事項があると認められない場合には、株主総会における監査役の報告は不要であるようにも思えます。
 しかし、監査役設置会社(監査の範囲を限定しているものを含む)以外の会社であっても、その多くの会社は、任意で監査役の報告をしています。したがって、どのような構成機関の株式会社であれ、監査役の報告をすることが妥当であるといえます。

○報告時期

 報告時期については、報告事項の前が東京方式、報告事項の後が大阪方式と言われていたときがあったように、特に報告時期について決まりはありません。
 しかし、報告の内容がほとんど監査報告の概要と総会提出議案等の適法性等であることと総会運営の流れからすると、報告事項の前の方が適切であると考えられます。なお、実務においては圧倒的多数で報告事項の前に監査役の報告がなされています。

○具体例

<十分な記載例>

○○株式会社第×期定時株主総会議事録

 平成○○年6月27日(木)午前10時から○○県○○市○○区△丁目△番△号 当社本店○階大会議室において、○○株式会社第×期定時株主総会を開催した。
定刻、定款の定めにより取締役社長A議長席につき、開会を宣した。
議長は、株主の出席状況について次の通り報告するとともに、本総会は議案の決議に必要な会社法および定款の定足数を満たしている旨を報告した。

1,株主の出席状況等

議決権のある総株主数
その議決権の総数
出席株主数(書面による議決権行使・委任状出席を含む)
その議決権の総数
・・・・・
[  ]名
[   ]個
[  ]名
[   ]個
2.出席者

  欠席者
取締役  A , B , C , D , E 及び F の○名
監査役  甲 , 乙 及び 丙 の○名
取締役G(病気のため欠席)、取締役H(海外出張のため欠席)、
取締役I(他社株主総会出席のため欠席)の○名


 続いて、議長は、監査役会の監査報告を求めた。
常勤監査役 甲 は、監査役会全員の意見が一致しているので、その一致した意見を報告する旨説明し、別添「招集ご通知」記載の監査報告書謄本のとおり、第×期における取締役の職務の全般について、適宜の方法により監査を行った結果、会計に関する事項についてはα監査法人の監査方法及び結果は相当であると認め、また、会計以外に関する事項についても、不正の行為又は法令もしくは定款に違反する重大な事実は認められず、併せて、連結計算書類ならびに本総会に提出される全ての議案及び書類に関しても、法令もしくは定款に違反し、又は著しく不当な事項は認められない旨報告した

 ・・・・・
以上をもって、報告及び全議案の審議を終了したので、議長は午前11時30分閉会を宣した。

以上

 この報告内容は、監査報告書の記載事項(会社法381条1項、会社法施行規則105条・436条1項、会社法施行規則129条)を簡潔に述べるとともに総会提出議案等の適法性にも触れている(会社法384条)ことから、適切な内容であるといえます。

<簡略例>

 監査役 甲 は、第×期事業年度の監査の方法及び結果は別添の第×期定時株主総会招集通知に記載の通りであり、また、本総会に提出される議案及び書類はいずれも法令及び定款に適合し、不当な事項は認められない旨報告した。

 監査役会の監査報告書の内容を別添の招集通知を引用して省略したものです。
 監査役は、いつでも、取締役及び会計参与並びに支配人その他の使用人に対して事業の報告を求め、又は監査役設置会社の業務及び財産の状況の調査をすることができます(381条2項)。このように監査役には独任制が認められていることから、「監査役会を代表して」という言葉は使わないほうがよいと思われます。


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