報告事項及び一括回答に関する質疑応答(2)
2014年2月19日 掲載
前回は、報告事項及び一括回答に関する質疑応答について、役員の説明義務が生じる場合とその例外についての説明をしました。今回は、報告事項及び一括回答に関する質疑応答について株主総会議事録へ記載する場合の記載例を交えて説明していきたいと思います。
○記載方法
報告事項及び一括回答に関する質疑応答の株主総会議事録への記載方法については法令で定まった方式があるわけではありません。したがって、株主が分かりやすいように記載すれば足ります。
記載方法については、実務上、4つのパターンが考えられます。
- 質疑応答があった旨のみを記載する方法
- 株主からの質問内容のみを記載する方法
- 株主からの質問内容と役員の回答内容を具体的に記載する方法
- 株主からの質問内容、役員の回答内容及び質問者名・回答者名を記載する方法
確かに株主総会議事録には質疑応答の内容を簡潔に記載すべきです。しかし、株主に分かりやすいように記載するためには、株主からの質問内容と役員の回答内容を具体的に記載すべきではないかと思われます。
質疑応答が少ない場合には株主総会議事録の中に全て記載してしまえばいいですが、質疑応答が多数ある場合には、別紙に質疑応答をまとめてしまうことも方法の1つではないかと思われます。
なお、株主総会に出席している株主は基準時前の株主であり、株主名簿上の株主とは限らないことから、質問者名については、記載をするか否かはどちらでもよいと思われます。回答者名についてもどちらでもよいですが、実務では記載することが多いようです。
○記載例
□株主からの質問内容と役員の回答内容を具体的に記載する方法
○○株式会社第×期定時株主総会議事録
平成○○年6月27日(木)午前10時から○○県○○市○○区△丁目△番△号 当社本店○階大会議室において、○○株式会社第×期定時株主総会を開催した。
定刻、定款の定めにより取締役社長A議長席につき、開会を宣した。
議長は、株主の出席状況について次の通り報告するとともに、本総会は議案の決議に必要な会社法および定款の定足数を満たしている旨を報告した。
・・・・・
続いて、議長は、監査役会の監査報告を求めた。
監査役 甲 は、第×期事業年度の監査の方法及び結果は別添の第×期定時株主総会招集通知に記載の通りであり、また、本総会に提出される議案及び書類はいずれも法令及び定款に適合し、不当な事項は認められない旨報告した。
報告事項
1.
株主の事前質問事項である配当政策、資金繰り、借入金、労使関係などについて、議長指名により代表取締役副社長 C から回答がなされた後、議長は質疑を求めたところ・・・・・
次に報告事項に関し、別紙要約のとおり、株主から質問があり、これに対して議長及び担当取締役が説明を行った
・・・・・
以上
<別紙>
質疑応答は以下のとおり。
1.販売不動産に関する質問
コストダウンの方法とその成果について説明されたい、との質問が出された。
議長は、土地の仕入れ価格、工事費、宣伝広告費の抑制に努めた結果、原価率が下がり、コストダウンに繋がったとの説明を行った。
2.
・・・・・
文章形式で記載しましたが、より簡潔に記載するためには、表でまとめたりすることも考えられます。
□株主からの質問内容、役員の回答内容及び質問者名・回答者名を記載する方法
事前質問に対する説明が終了し、議長は議場に質問を促し、質疑応答に入った。質疑応答の要旨は以下のとおり。
質問要旨(X氏)
第×期の短期借入金が前期に比べ増加した理由及び借入先銀行が拡大した理由を説明せよ。
応答内容(取締役C)
割引手形を当座貸越の方に変更したためである
□説明義務が生じないことを前提とした記載した例
<特定事項ではない場合>
議長は、事前の質問内容が抽象的、包括的であるので、質問者を含めて直接、具体的な質問を受ける旨を告げ、質疑応答に入った。
株主 △株式会社の赤字解消の目処について
社長及び専務から、・・・・・旨の回答を行った。
抽象的・包括的であれば、説明義務が生じないことは先ほど述べたとおりです。そこで、株主に具体的な質問をするよう注意を促しています。
<事前質問に基づいて会場で質問をした場合>
事前質問に基づいて、株主X氏から事業報告の記載事項、貸借対照表、株主資本等変動計算書及び個別注記表の項目について質問があった。
これについて、議長は・・・・・と述べた。
これは、事前質問をした株主でも会場で質問をしなければ、役員に説明義務は生じないという前提で質問を取り扱っています。そこで、「事前質問に基づいて・・・質問があった」という記載の仕方をしています。
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