決議事項の上程及び審議(1) ~一括審議方式と個別審議方式~

2014年2月26日 掲載

 前回は、報告事項及び一括回答に関する質疑応答についての説明をしました。報告事項及び一括回答に関する質疑応答後は、(1)議題の上程、(2)説明、(3)提案、(4)質疑応答、(5)採決という順序で議事が進んでいくこととなります。

■決議事項の上程及び審議に入る旨の記載

 報告事項及び一括回答に関する質疑応答後に決議事項の上程及び審議に入るので、審議に入る旨を記載することとなります。

○記載例

 議長は、以上をもって報告事項に対する質疑を終了したい旨を述べ、議場の了承を得た後、本日の議案を上程し審議に入った。

 記載例では、「議案を上程し審議に入った」と記載しましたが、単に「議案を上程した」「議案の審議に入った」と記載することや「議案を付議した」と記載する等、様々な記載方法が考えられます。
 また、記載例では「議案」と記載しましたが、実務では、「決議事項」と記載される場合もあります。

■一括審議方式と個別審議方式

 一括審議方式とは、議案全てを一括して上程し一括審議を行った後に、採決を順次行なう方式です。これに対し、個別審議方式とは、招集通知に記載された順序に従って、個別に議案を上程して審議・採決を行なう方式のことをいいます。

 一括審議方式を採用する場合、全ての議案を一括で提出し、議案についての質問及び動議を含めた審議に関する全ての発言を受けた後、決議事項について採決のみをとることとなります。

 原則は議案ごとに審議を行っていくことが妥当なようにも思えます。しかし、会社側からすれば株主総会を効率的に運営する必要があり何度も同じような質問を受けたりして、時間が長くなることはできる限り避けたいと考えるはずです。他方、株主側からしても、質問したい事項がどの議案にあたるのかが分からないことがあるので、全てまとめて審議してもらえた方が質問しやすい場合もあります。
また、個別審議方式の場合には、一つの議案の審議に多くの時間を費やしてしまい、他の議案の審議の際に質問の打ち切りを行ってしまうと、説明義務違反(会社法314条)となってしまう場合があります。他方、一括審議方式では質問を打ち切って採決に入ったとしても、全議案についての意見や修正動議は出され審議されたことになるので、説明義務違反が問われる可能性は低くなります。

 実務においては、一括して上程・審議することについて株主から了承を得た上で、一括審議方式を採る会社も多いです。最高裁判所の判例ではなく、下級審の裁判例ですが、一括審議方式について「議長の裁量の範囲内に属するということができるのであって著しく不公正な措置であったとは認めることはできない」としています(札幌高判平成9年1月28日)。

○一括審議方式の記載例

続いて議長から、審議を行う各議案について、一括して上程する旨説明が行われ、株主から了承を得た。引き続き、議長は次のとおり議案を一括して上程し、説明をした。

 第1号議案 ・・・・・の件

 第2号議案 ・・・・・の件

続いて、議長は報告事項及び第1号議案から第○号議案までの各決議事項に関する質問を受け付けたところ、株主から取締役に対し、・・・・・についてのそれぞれ質問があり、議長及び他の出席取締役が回答を行った。
引き続き、議長は第1号議案から第○号議案までの各議案の賛否を議場に諮ったところ、出席株主の議決権の半数を超える賛成があったので、議案は原案どおり承認可決された。

 次回は、各議案についての具体的な内容に入りたいと思います。


上記内容は掲載日時点の法律に拠っています。最新の情報ではない可能性がありますのでご注意ください。