決議事項の上程及び審議(5) ~取締役及び監査役の報酬額改定の件~

2014年3月26日 掲載

 前回は取締役及び監査役選任の件の議案を株主総会議事録に記載する場合の記載方法を説明しました。今回は取締役及び監査役の報酬額改定の件の議案についての説明をしたいと思います。

○報酬額を定める際の株主総会決議の必要性

 取締役及び監査役の報酬は、定款でその額を定めている場合を除き株主総会の決議によって定められます(会社法361条1項387条1項)。実務では月額又は年額の最高限度額を定めることが通例です。
 賞与についても定款に定めのある場合を除き株主総会の決議によって定めることができます(会社法361条1項387条1項)。ただし、取締役に対する賞与は、従業員に対する賞与のような会社の経費ではなく、会社の利益の分配として支給されるものなので、会社の利益処分案に、総額を記載し、株主総会の承認決議を得なければなりません。したがって、取締役及び監査役の報酬の件という議案とは別に、役員賞与の支給の件として議案を設定することが良いと思います。

 なお、委員会設置会社における取締役、執行役及び会計参与の報酬は、定款又は株主総会で決めるものではなく、報酬委員会が個人別の報酬等の内容を決定します(会社法404条3項409条)。

○具体例

第○号議案 取締役及び監査役の報酬額改定の件
議長から、取締役及び監査役の報酬額については、平成××年×月×日開催の第×期定時株主総会において取締役については月額[    ]万円以内、監査役については月額[    ]万円以内として承認を受けていたところ、今回取締役の増員及び賞与の費用処理等に対応して、これを取締役については月額○億円以内、監査役についてはその同意を得て月額○○○○万円以内に増額改訂することとし、なお、取締役報酬額には使用人兼務取締役の使用人としての職務に対する報酬は含まないこととし、株主総会の承認を得たい旨を諮ったところ、大多数の賛成を得てこれを了承した。

 監査役は、株主総会において、監査役の報酬等について意見を述べることができます(会社法387条3項)。したがって、「監査役の同意を得て」というように監査役の同意の意見があった旨の記載をしておいた方が良いと思われます。

○ストック・オプションを導入する場合

 取締役の報酬の一部として、予め決められた価格で自社株を買う権利であるストック・オプションを導入することもできます。従来、取締役に対して、インセンティブ報酬として付与されてきたいわゆるストック・オプションは、新株予約権の無償発行として有利発行手続によると解されてきましたが、会社法の下では、有利発行にならない場合があり、報酬等(会社法361条1項)に該当すると考える事ができます。
 ストック・オプションを導入する場合、「報酬等のうち額が確定していないもの」にあたるため、「その具体的な算定方法」を定めなければならず(会社法361条1項2号)、なおかつ、「報酬等のうち金銭でないもの」にもあたるので、「その具体的な内容」(会社法361条1項3号)を定めなければなりません。


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