決議事項の上程及び審議(10) ~議案提案権~

2014年5月1日 掲載

○議案提案権

 議案提案権とは、株主は、株主総会において、総会の目的事項(当該株主が議決権を行使することのできる事項に限る)につき、取締役会提出議案に対する修正提案(修正動議)を提出することのできる権利です(会社法304条325条)。前回も述べましたが、議案提案権については、その事項について議決権を行使することのできる株主であれば、原則株主全員が行使することができます(会社法304条本文)。

○会社側が株主の提案を拒める場合

 株主の修正提案に対して、会社側が提案を拒める場合があります。それは、当該議案が法令若しくは定款に違反する場合又は実質的に同一の議案につき株主総会において総株主(当該議案について議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の十分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の賛成を得られなかった日から三年を経過していない場合です(会社法304条ただし書)。

○採決順序について

 会社原案と株主提案の採決順序については、修正動議を先にすることが一般原則といえますが、会社原案から先に採決することについて、議場に諮ってその承認を得ていれば、議長の議事運営上問題はないと思われます。
 ただし、修正動議の方法で発言しようとする株主もいると思われるので、原案を先に採決することで株主の発言の機会を不当に奪うこととならないよう注意する必要があります。

○議案提案権の具体例

 第○号議案 剰余金の処分の件

 議長は、本議案についての概要を別添提出書類に基づき説明、剰余金を次のとおり処分したい旨提案した。

  1. 配当財産の種類 金銭
  2. 株主に対する配当財産の割当てに関する事項及びその総額
    普通株式1株につき金○○円
    総額○○億円
  3. 剰余金の配当が効力を生ずる日 平成○○年○月○日

 この会社提案に対して、□□□株主(出席票番号△△番)から、株主配当金を○円増額して○○円としてほしい旨の修正動議が提出された。
次いで、議長は会社原案を先に採決したい旨を議場に諮り、多数の了解を得た。
 よって、議長は会社原案の賛否を議場に諮ったところ、出席株主の議決権の90%(書面による原案賛成株主□□□名、その議決権数○○○○個を含む)を超える賛成を得たので、本議案は会社原案どおり可決、株主提出の修正動議は否決された。

 修正動議は原案を修正するものなので、その採否を議場に諮る必要があります。ただし、先に会社原案を採決したい旨を議場に諮り、多数の了解を得た上で、会社原案を可決することで、株主の修正動議を否決することができます。

○違法な修正動議が出された場合

 例えば、監査役の報酬については、株主総会の決議した範囲内で監査役の協議で報酬を決めるように定められています(会社法387条1項、2項)。そうであるにもかかわらず、監査役の報酬を取締役に一任すべきとの修正動議が出された場合には、違法な修正動議が出されたこととなります。
 このような場合でも、昨今、あまり法令について詳しくない一般株主の発言が多くなった状況からすると、違法だからというだけで動議を却下してしまうと、株主の議案提案権の機会を不当に奪うこととなりかねません。したがって、違法だからという理由で形式的に却下せず、一応、議場に諮ることが総会運営上穏当な方法であると思われます。


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