決議事項の上程及び審議(11) ~動議への対応1(議案の修正動議)~

2014年5月7日 掲載

○動議とは

 動議とは、株主総会の目的である事項及び総会の運営などに関し総会の決議を求める旨の意思表示であり、その提出権者は株主及び議長である。
 動議の分類としては、いくつかありますが、大まかには修正動議と議事運営に関する動議に分けることができます。
 総会の現場においては動議なのか意見なのか判然としない発言も少なくありません。しかし、適法な動議を無視して審議をすると株主総会の決議取消事由(会社法831条1項)となりかねないため慎重に取り扱うことが必要です。動議らしき発言があった場合には、議長が動議処理のプロではないので、事務局が、

  1. 動議が出たのか、
  2. 動議が適法か、
  3. 議長の議事整理権の範囲内で処理できるか、それとも議事に諮る必要があるのか、
  4. 具体的にはどのような議事運営でどう処理するのか

等の判断を短時間で行うこととなります。

○議案の修正動議

 議案の修正動議は、それが修正動議として許される範囲のものであるかぎり、必ず議場に諮らなければなりません。
 実務上も、いずれ圧倒的多数で否決できるのであれば、動議について審議するかどうかという議論をするよりも、端的に審議・採決の対象とした方がいいと考えられます。
 また、修正動議については、採決時に議場の承認を受けた上で原案を先議で採決することは差し支えありません。この場合、原案賛成の議決権行使書による議決権数は修正動議に反対、他方、原案反対の議決権行使書による議決権数は修正動議の議決権には棄権(賛否不明)として扱われることとなるので、株主総会議事録の記載の際には注意が必要です。
 このため、修正動議については個別審議の中で受けとっておき、採決については、最終の各議案採決の際、原案先議の承認を得た上で、原案を採決することとすれば、原案採決と同時に、過半数の賛成議決権行使書の効果で議場の賛否にかかわらず自動的に原案が可決され、その結果、修正動議については否決されることとなります。

○修正動議の手続

(1)修正動議としての採用

 まずは、動議が出された場合、動議として正式に提出する意思があるか否かを確認する必要があります。正式な動議でなければ、実務上、原案に対する単なる反対意見として受け取ることも可能となります。
 また、動議として取り上げるとしても修正できる範囲を超えた修正動議やその他不適法な動議については取り上げる必要はありません。ただし、実務上は否決が確実であるとの見込みのもと敢えて取り上げるという方法をとることもできます。

※「動議」と「意見」は採決を求めているか否かに差異があります。したがって、曖昧なときは議長が確認をとるようにすべきです。

(2)修正動議についての審議・採決

 適法な動議であった場合、修正案は、原案と一括して審議することとなります。
 修正動議の採決においては、修正案先議にこだわる必要はなく、実務上、大半の会社では、議決権行使書によって各議案についても必要な原案賛成票が得られているから、総会の賛成を得て原案先議とすることで、直ちに修正案の否決が明白となります。
 修正案可決の可能性が皆無な場合のみならず、修正案が複数提出され、修正案の一部修正提案が出されるなどして混乱の状況となった場合などについては、特に原案から先に採決したい旨議場に諮って原案から採決した方が良いといえます。

○修正動議の具体例

 具体例は前回と同様ですが、ここで再度見る方が分かりやすいと思いますので、載せておきます。

 第○号議案 剰余金の処分の件

 議長は、本議案についての概要を別添提出書類に基づき説明、剰余金を次のとおり処分したい旨提案した。

  1. 配当財産の種類 金銭
  2. 株主に対する配当財産の割当てに関する事項及びその総額
    普通株式1株につき金○○円
    総額○○億円
  3. 剰余金の配当が効力を生ずる日 平成○○年○月○日

 この会社提案に対して、□□□株主(出席票番号△△番)から、株主配当金を○円増額して○○円としてほしい旨の修正動議が提出された。
次いで、議長は会社原案を先に採決したい旨を議場に諮り、多数の了解を得た。
 よって、議長は会社原案の賛否を議場に諮ったところ、出席株主の議決権の90%(書面による原案賛成株主□□□名、その議決権数○○○○個を含む)を超える賛成を得たので、本議案は会社原案どおり可決、株主提出の修正動議は否決された。


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