決議事項の上程及び審議(12)
~動議への対応2(議事運営に関する手続的動議)~

2014年5月14日 掲載

○議事運営に関する手続的動議の例

 議事運営に関する動議の例としては、議長の不信任動議や休憩動議等が考えられますが、議場に諮るべき動議と議長自ら判断できる動議に大別できます。

  1. 議場に諮るべき動議
    検査役の選任(会社法316条)、延会・続会(会社法317条)、会計監査人出席要求(会社法398条)等会社法に規定されているものの多くは、必ず議場に諮らなければならないとされています。また、議長の不信任動議についても議長自ら判断することができないため、議場に諮らなければならないとされています。
  2. 議長が自ら判断できる動議
    他方、会社法上の規定に基づかないものについては、議長の議事整理権の範囲内として、議長自ら判断することができる場合が多くあります。
    質疑の打ち切り、休憩、退場、議案の審議の順序変更、決議事項の一括審議、採決方法の動議として役員選任や退職慰労金支給について個人ごとに個別採決する旨の提案などが例として挙げられます。
    もっとも、実務上、円滑な議事進行という観点から、議長自ら判断できる動議を議場に諮ることも当然に認められます。

○議事運営に関する手続的動議についての注意点

 総会の議事運営手続には議決権行使書の効力は及ばず、議決権行使書による議決権数は、手続的動議にあたっては、出席株主に算入されません。現実に出席した者だけが議決権行使できます。したがって、議事運営についても株主総会議事録記載についても注意が必要です。
 これに対する対策としては、現実の出席者中、圧倒的多数を制するに足りる大株主から議事進行等に関連する動議が提出された場合は、議長に協力して議決権を行使することについての包括委任状の提出を受けておくという方法が考えられます。

○議事運営に関する手続的動議の具体例

◆質疑打ち切り動議

 この時出席番号○○番の××株主から議事進行、質疑打ち切りの動議が出されたので、議長は場内に動議の賛否を諮ったところ、絶対多数の賛成(挙手・拍手)で動議は可決され、質疑は打ち切られた。

◆議長不信任動議

 第○号議案(取締役選任の件)可決後、××株主から議長不信任案の動議が提出され、議長が動議の賛否を諮ったところ、反対多数により不信任案は否決された。

◆利害関係役員退場に関する動議

 なお、第2号議案(会計監査人選任の件)審議中、可決する前に、株主から、事情のある取締役、監査役の退場を認めたい旨の動議が提出されたので、議長は■■取締役と□□監査役の退場を認めたい旨議場に諮ったところ、満場一致でこれを承認したので○時○分■■取締役と□□監査役は退場した。したがって、この2名は第2号議案の審議の一部と採択及び第3号議案(退任監査役に退職慰労金贈呈の件)審議採択に関与しなかった。

 事情ある取締役と監査役の退場が認められていますが、総会における利害関係人の規定はなく、決議の方法が法令・定款違反又は著しく不公正な場合は、決議取消しの訴えの対象となっています(会社法831条1項1号)から、退場させる必要はないと思われます。
 事情ある取締役又は監査役が株主である場合には、本人の申し出によるのでない限り、退場を求める決議などしない方が無難です。そうしないと、株主を総会から不当に排除して決議をしたものとして、決議取消原因を生じるおそれがあります。


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