決議事項 ~競業取引の承認2~
2014年11月26日 掲載
前回は、競業取引の承認をする際の取締役会での手続を中心に具体例を踏まえながら説明をしました。今回は、もう少し詳しい説明をしたいと思います。
○「自己又は第三者のために」の「ために」とは?
会社法356条1項1号の「ために」とは、自己又は第三者の計算で(取引の実質的な利益が誰のものになるか)という意味であるとする考え方(通説)と自己又は第三者の名でという意味であるとする考え方(立案担当者の見解)が対立しています。どちらの見解でも間違いではありませんが、立案担当者の見解の方が分かりやすいと思います。
○「会社の事業の部類に属する取引」とは?
「会社の事業の部類に属する取引」とは、会社が実際にその事業において行っている取引と、目的物と市場(地域・流通段階等)が競合する取引です。
なお、あくまで「取引」についての承認が必要であり、競業会社の取締役に就任しただけでは、競業取引にはあたりません。
○「重要な事実」とは?
競業取引で取締役会の承認を受ける際に、重要な事実を開示しなければなりません。これは、取締役会がその取引を承認すべきか否かの判断をする前提となる情報を与えるためです。
そして、「重要な事実」とは、取引の相手方、目的物、数量、価額、取引期間、利益又は損害等のことを指します。
○事後の報告
競業取引をした取締役は、当該取引の後、遅滞なく、それについての重要な事実を取締役会に報告しなければなりません(会社法365条2項)。これは競業取引の承認を受けていたとしてもしなければなりません。
○競業取引と取締役の責任
取締役会の承認を受けずに競業取引が行われた場合であっても、その効力は無効とはなりません。取締役会での承認を受けたか否かは関係なく、競業取引が行われ、それによって会社に損害が生じた場合、競業取引を行った取締役等は、会社に損害賠償責任を負うことがあります。
なお、取締役会での承認を受けずに競業取引が行われた場合には、会社法423条2項が適用されることとなり、取締役等の損害賠償責任が認められやすくなります。
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